「人生の選択」が難しい時代になってきました。 例えば、大手金融機関に勤めていてエリートと目されていた人間でさえも、会社の破たんが襲いかかったり、リストラや減給が当たり前のようになされ、安穏としていられなくなっています。
一生ものと思って税理士などの資格をとったとしても、パソコンの発達で仕事が大幅に減るかもしれません。 医者や弁護士のような資格でさえも、医療費が削減されることもあるし、安泰といえないかもしれないのです。
いま有望とされる職種も将来はどうなるか保証されていないのです。 私の父親は昔、当時は超一流とされた企業の一つ、カネボウに就職したのですが、私が中学生の頃に繊維産業が落ち目になり、給料も減って、私たち家族の生活も苦しくなっていきました。
父親が就職した頃に二流と言われた家電の会社に勤めた人たちは、大学を出ているというだけで早々と出世したのを横目で見て、会社を選ぶことの難しさを私は目の当たりにしたものです。 そのカネボウは今、解体しようとしています。
東大卒の私の同期でも、当時は花形と言われた金融に勤めた人がたくさんいました。 しかし今は、決してエリートと言えない身分になっているようです。
景気のいい時期には20歳前後で年収2000万円ということもあった、まさにあの金融機関で、と私は信じられなく思うことがあるのです。 そんな時代だから、「将来なにになろう」「どんな会社に勤めよう」と決められない人が増えているのも、もっともなことです。

生涯の伴侶を探すのも同じようなことでしょう。 昔と違い、気に入らなければ離婚が当たり前の現代では、結婚をしたり、子どもをつくったりすることに「ためらい」を感じることは、うなずけることです。
そのうえ、この長寿高齢社会に悔いのある就職や結婚をすれば、その先の人生が長すぎるという問題もあるでしょう。 こうして、進路が決められず、大学に長居をしたり、就職をするより、様子見で大学院に進んだり、あるいはフリ−タ−の道にすすむ人も増えているのでしょう。
結婚にしても晩婚化は確実に進んでいます。 しかし、逆に今は早い時期に人生が決まるようになっているという、新たな局面が出てきてもいるのです。
会社のなかでは競争が起こり、一生を保証してくれなくなるだけでなく、その競争の結果が早い段階で決まるようになってきました。 例えば、初代で銀行の支店長になったり、大企業の部長になったり、あるいは子会社の社長になったりという人事が珍しくなくなってきたのです。
「勝ち組」になるためには、早めに勝負に出ないといけないのです。 結婚にしても、のんびりして30代後半で子どもをつくるとすると、子どもが大学にいら0代のときに、会社が自分を雇い続けてくれる保証もないし、ましてや給料も40代くらいから上がらなくなると予想されているのです。
可能であるなら20代で結婚し、40代になるまでには子育てを終わらせるのが理想的な時代になってきました。 つまり、自分の進路、「すすむ路」がなかなか決められない人が増えるなか、企業社会も人生も、勝ち組になりたければ「すすむ路」を早めに決めて勝負をかけないといけないし、そうすれば勝ち組になれる可能性が高い世の中となっているのです。
そのような時代に、どう進路を決め、生きていけばいいかを私なりに述べようとしたのが私です。 基本的には、最終的な結論は先延ばしにしてもいいが、早め早めに仮の結論を出したり、まずは「試しにやってみる」ことをすすめるようにしました。
先のわからない時代だから、試しにやってみられる人や実行力のある人が勝ち残る可能性が強まっているからです。 私を読んで、自分がちょっとグズグズしているなと思っている読者の方が、とりあえず前に進んでみようという気持ちになっていただけるなら、私として幸せこのうえありません。
現代は、昔と比べて「ライフステージ」がズレてきています。 いつも成人式のシーズンになると、「20歳だというのに成人式であんなに騒ぐバカな子どもがいる」といった話題が始まりますが、昔の20歳と今の20歳は、やはり明らかに違います。
昔の20歳の感覚で今の20歳の人の行動を考えると、理解できない部分がたくさんあるでしょう。 よく、選挙権をもっと若い人にもたせたらいいと言われます。

昔の20歳と今の20歳が違うのであれば、それさえも本当によいのか、検討が必要です。 逆に精神年齢が若返っていたり、幼くなっているのであれば、選挙権が与えられる年齢がもっと遅いほうがいいかもしれないくらいなのです。
私のみるところ、人間の年齢とは、意外と相対的なものだと思います。 例えば高校の野球部に在籍していたら、部員は高3になると最年長になります。
自分でもかなりしっかりしてきた、部下も指導してきたという雰囲気が身についてくるのです。 高校野球に出ている高校3年生なども見ていると、実際の年齢よりも、高3なのにしっかりしているな、というふうに見えることが多いものです。
ところが、そういう人が大学に入って野球部に入ると、また1年坊主になります。 すると、心理的にも急に頼りなくなってしまうことが、よく見受けられます。
周囲に年長者がいっぱいいると、組織のなかでどの程度若いかによって、若造でいるか、ある程度ベテランという感覚になれるかが違ってくるのでしょう。 私の知り合いの老年医学の専門家は、「『年寄り」を年齢で区切るのでなく、人口の上から1割なら1割の年齢層で区切るという考え方が合理的ではないか」と言っています。
つまり、人口構成が変わると「年寄りの始まり年齢」が変わる。 昔はら0歳が年寄りの入り口だったのに、今60歳くらいから年寄りと考えていいことになります。
いわゆる「若さ」という考え方も、たぶん違ってきます。 人間の年齢とは、意外と相対的なものである。
一つ例を挙げましょう。 『サザエさん」に登場する「マスオさん」は、いくつに見えるでしょうか?ほとんどの人が、マスオさんがいくつに見えるかと聞かれたら、初歳代の半ばくらいだろうと答えます。

しかし、彼はお歳だそうです。 妻のサザエさんは担歳です。
サザエさんの漫画をよく読めば、サザエさんの妹であるワカメちゃんが小学校3年生ですから、妥当な年齢設定です。 ところが、現代の私たちの目線で見ると、マスオさんは30代半ばに見えます。
下手をすれば40歳くらいのおじさんに見えるかもしれません。 これが現代の日本人の「平均的年齢」のイメージだと思います。
一方、波平さんはいくつに見えるでしょう?70歳を超えた、「おじいさん」に見えないでしょうか。 しかし、波平さんはあの時代で定年退職になっておらず、現役で会社に勤めているわけだから、ら0歳くらいなのです。
「島耕作」よりも若いことになります。 我々が考えている以上に、さまざまな意味での若返りが起こっています。
同時にみんな当たり前のように年齢を重ねているのです。 私自身も、年代の区切り方を変えていく必要があると考えています。
外見にしても気持ちの若さにしても、同じようなものではないでしょうか。 こうなると、日本人全体が若返ったと考えるしかありません。


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